シナノキ

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 だいぶ盛りを過ぎてしまってはいるが、今年はシナノキの花付きがよい。前から一度花の写真を撮らなくっちゃ、と思いつつ花期が過ぎ去ろうとしていた。ようやく今朝、シナノキの写真を撮って出社した。
 花盛りの木の下に入ると、甘い香りがしてくる。ラベンダーのようにすっと鼻に抜けるような香りではないのだが…。そういえば2週間ほど前に南一条の角を曲がったときにも同じ香りがしたっけ。花期が長いというよりも、この辺り方がきっと夏が遅いのだ。

 シナノキの近縁種にオオバボダイジュがある。ボダイジュというとミュンヘンの一夜を思い出す。
 今から6年も前になるのだが、北海道川の会のメンバーで近自然の川を見にスイス・ドイツ・オーストリアを訪問した。途中から2パーティに別れて行動したが、その最後の夜、私たちはミュンヘンに集合し、旅をコーディネイトして下さった山脇さんと再会した。そのとき山脇さんにバイエルン州で近自然河川工法を研究しているW・ビンダーさんを紹介していただいた。イザール川などを案内してもらった後、一同で世界一大きいというビアホールで歓談することになった。
 さて、そのときである。私はビンダーさんの奥さんとテーブルの角を挟んで、二人でお話をしなければならない位置に座らされることになったのだ。私のつたない英会話では、ほんの十分ほどは間を持たすことができたのだが、その後が続かない。「どうしよう」と考えたときにはたと思いついたのが、シューベルトの「冬の旅」の「菩提樹」である。もとより日本語の歌詞さえ危ないのだが、メロディーを口ずさみながら「この歌なら知っているけれど…」というと、彼女はさっそく歌い出す。「いずーみに沿いてしげ~るボダイジュ~…」、もちろんドイツ語で、私に理解できるのは「Lindenbaume」の一語だけなのだが…。その後は「モミの木(Tannenbaum)」・「学生歌」など何曲か合唱(こちらはハミングだけだったが)して、けっこう場を盛り上げることができた。よその国を訪問するときには、当然挨拶程度と「ありがとう」だけは覚えていった方が失礼に当たらないと聞いたことがあるが、何曲かご当地ソングを覚えていくことも必要だと痛感した夜だった。

今日の花「シナノキ」:Tylia japonica
 漢字では「科木」または「木品(木偏に品)木)と書く。「木偏に品」は当て字らしい(辻井達一,1995)。シナノキの語源はアイヌ語「シニペシ」に由来するという。「シニペシ」はシナノキの内皮またはこれから採った繊維を意味する(深津正・小林義雄,1993)。結ぶ・縛る・括るという意味のアイヌ語に由来するという説(牧野富太郎,1981)もあるが、これは間違いらしいとされている(辻井達一,1995)。ドイツ語の「Lindenbaume」のlindenも似たような意味があって、「柔らかな」という意味の「lind」に由来し、樹皮がしなやかであるが故に名づけられている(小牧健夫ほか,1971)。アッシ織りはオヒョウの繊維からつくられるのだが、シナノキも織物に使われたようで、「シナ布」というものが東北地方で古くから織られたようだ(福岡イト子,1995)。
 属名Tyliaはボダイジュに対するラテン古名。語源は翼(ptilon)にある。翼のような包葉(花の付け根付近にある葉)が花柄(個々の花を付けている枝)に癒着していることからきている(牧野富太郎,1981)。種小名japonicaは「日本の」という意味である。
 「シナノキ 蜂蜜」で検索してあちこちのホームページを見ると、いずれもよい蜜源であると記されている。

[参考文献]
辻井達一,1995,日本の樹木 都市化社会の生態誌,296pp,中公新書,中央公論社
深津正・小林義雄,1993,木の名の由来,290pp,東京選書,東京書籍
牧野富太郎,1981,牧野新日本植物図鑑,1060,北隆館
小牧健夫・奥津彦重・佐藤通次.1971,岩波 独和辞典 増補版,1682pp,岩波書店
福岡イト子,1995,アイヌ植物誌,241pp,草風館

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